お子さんが不登校になると、学校からこんな連絡が届くことがあります。
「卒業式はどうされますか?」 「卒業写真だけでも撮りにきてください」 「卒業文集だけでも書いてもらえませんか」
不登校の子どもを持つ保護者にとって、この時期は特に心が揺れる季節です。「行かせるべきなのか」「無理に参加させて傷つけてしまわないか」「他の子と同じようにしてあげられなくて申し訳ない」そんな罪悪感や迷いが、胸に積み重なってくることでしょう。
私自身、次男が小学6年生のとき、まったく同じ経験をしました。
当時の私は「卒業式というものは出席するものだ」という固定観念が強く、なんとか参加させなければと必死でした。結果として、全体の卒業アルバム撮影の一瞬だけ学校に連れて行き、撮影が終わるとすぐに帰宅。卒業文集は自宅で書かせました。今振り返ってみると、あのとき私は本当に大切なことを見落としていたと思います。
卒業文集や卒業写真より、もっと大切なものがある
不登校の悩み専門家として、また3人の息子が不登校を経験した母として、今だからはっきり言えることがあります。
「不登校の子どもの卒業式や卒業文集への参加は、必ずしも優先すべきことではない」
もちろん、本人が「行きたい」「書きたい」と思っているなら、それはぜひ応援してあげてください。しかし問題なのは、子ども自身ではなく、親や学校の「こうあるべき」という価値観が子どもを追い詰めてしまうケースです。
不登校の子どもはすでに、毎日を生きるだけで多大なエネルギーを消耗しています。登校できない自分への罪悪感、友達との距離感、将来への不安。そこに「みんなと同じようにしなければ」というプレッシャーが加わると、心はさらに疲弊していきます。
マズローの5段階欲求と、不登校の子どもが動き出す仕組み
心理学者アブラハム・マズローが提唱した「欲求の5段階説」をご存じでしょうか。人間の欲求は階層構造になっており、下位の欲求が満たされてはじめて、上位の欲求が芽生えるとされています。
- 生理的欲求(食事・睡眠など)
- 安全の欲求(安心できる環境)
- 社会的欲求(所属・つながり)
- 承認欲求(認められたい・自分を肯定したい)
- 自己実現欲求(自分らしく生きたい・夢を叶えたい)
不登校の子どもたちの多くは、第4段階の「承認欲求」が深く傷ついた状態にあります。発達障害児の不登校においても、この傾向は顕著です。自己否定感が積み重なり、「どうせ自分はダメだ」「何をやっても無駄だ」という思考パターンが定着してしまっています。
この状態でいくら「学校に行きなさい」「卒業式くらい出なさい」と言っても、子どもは動けません。なぜなら、動くためのエネルギーそのものが枯渇しているからです。
必要なのは、叱咤激励でも、無理な参加要求でもなく、承認エネルギーを回復させることです。
不登校の子どもたちが自ら動き出した実例
私はこれまで、3人の息子の不登校経験と、数多くの学びと実践を通じて、「子どもが自ら動き出すやり方と順番」をメソッドとして体系化しました。このメソッドをお母さんたちにお伝えし、実践していただいた結果、以下のような変化が起きています。
- 受講1か月で、2年ぶりに登校を再開したお子さん
- 受講2か月で、3年ぶりに学校の門をくぐったお子さん
- 塾やフリースペースに自分から通い始めたお子さん
- 朝起きられなかったお子さんが、生活リズムを取り戻したケース
- 親子関係が悪化して会話がなかったのに、少しずつ話せるようになったケース
- 部屋からほとんど出られなかったお子さんが、外出できるようになったケース
- そして今年、受験生だったお子さんたち全員が、志望大学・志望高校に合格
これらはすべて、「承認エネルギーを上げる」というアプローチを軸にした変化です。
不登校の子どもの卒業式・卒業文集で悩んでいるあなたへ
不登校の子どもの卒業式や卒業文集への対応に迷っているなら、まず一度立ち止まって考えてみてください。
「これは子どもが本当に望んでいることか?」 「それとも、私自身の不安や罪悪感からくる判断か?」
不登校の悩み専門家として断言します。卒業式に出るかどうか、文集に何を書くかよりも、今この瞬間、お子さんの心に「あなたはここにいていい」と伝え続けることの方が、何百倍も重要です。
承認エネルギーが満たされたとき、子どもたちは必ず自分から動き出します。あなたのお子さんも、きっとそうなれます。

